それでも歯車は回っていく3 〜王国滅亡編・下〜

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タイガと共に練習場を後にした後のこと。ファレリアの声色はやけに落ち着いていた。



「それで、フィーのいない場所でしたかった話とは?」



「あー、今聞きますか。」



───苦笑。


「ええ、まあ。フィーがいないと情報が入らないとも脅されて、オウナさんだからいいものの、事によってはカイラでも許さない内容ですよ。」



「あはは。それはそれで嬉しい気がする。」



ファレリアの凄味をシレッと受け流せるスキルは、この世の物ではないのかもしれないと思わせられる。



「それはまあ置いておいて、フィーネちゃんが居なきゃいけないって言うのは半分合ってるんですけどね。院長、例の鍵持ってますか?」



「あ、はい。」



ポケットを漁り、小さい茶封筒から薄い長方形の物体を取り出して、オウナに手渡した。



「これが、彼女の部屋の鍵です。ただ、これは鍵の鍵。なんていうんでしょうね。
A(本物の鍵)をB(Aを取り出すための箱)に入れて施錠した状態で、Bの鍵を解除しないと、Aの鍵は取り出せない。Aの鍵を使わないと、部屋は開かないんです。
Bの鍵を開くには、箱自体に何らかの術式をかける事は遺書で分かったんですけど、誰の術式にも応答しませんでした。
それもあって、ユキナさんに一番近い存在だったフィーネちゃんならと思います。寧ろ、それでダメならもう誰にも開けません。」



「まあ一応。模倣(コピー)・古代術式、悪魔の雪スノウ・ヴィル)」



手のひらサイズ、小規模で発動させた。



どうあがいても、ユキナが大事なところでかける術式はこれしかない確信が根底にあった。微妙な変化でもいいから何かないかと凝視してから、大きく深いため息をついた。



「確かに、『フィーになら出来る』のかもしれないですね。」



一応断言しておく。ファレリアの術式は万能ではなく模倣(コピー)。だから、同じ術式を発動しても多少構造が違う為、模倣したこの合鍵(術式)では開かなかった。



「だけどまあ、今日中に鍵は開くと思って。タイガが何やら話をしたかったらしいので、二人きりにさせました。」



口角を上げて話が終わり。と思いきや、確信を持った冷静な声をかけた。