それでも歯車は回っていく3 〜王国滅亡編・下〜

「オウナじゃん!1ヶ月ぶりくらい?」



近寄ってくる白髪青年が一人──この雰囲気、どこかで…。



「こらこら、オウナ『さん』でしょ。」



「ああ、オウナおば『さん』」



「ッ!!」



いや、そんなはずはない。だって声変わりだってしてるはず。でも、なぜか小言を言い合う二人の声が、不気味なくらい遠くなる気がした。



「そういえば、そこの車椅子の水色髪。そいつどっかで…ってその目!?お前、フィーネじゃね!?」



顔がこわばる。冷や汗が出る。頭が真っ白になる。



───思考回路が、停止した。



「フィー?フィー!!」



「ちょっと、一体何したのよ──タイガ。」



「いやいや、声かけただけじゃん。」



『コントロールミスっただけじゃん。』



思い出すな。全部、過去のこと。



「フィー。」



そう言って硬く握った右手に触れたのは、お姉様だった。



『青い髪だ、呪われた目だの言われてたけどさ、それは昔の自分だって笑い飛ばせるようになると──強いよ。』



大丈夫。私はウェルティフルに行って、王族だって知って、1日戦争でも勝って、強くなっている。私はもう、人の顔色を見て怯えるだけの子どもじゃない。

それに、私の側にはお姉様やオウナさんがいてくれる。何かあったら、ゲキやカイラ兄様がいてくれる。

思い出すな。それは過去のフィーネ・アルマイラだ。今はフィーネ・アレクシアだ。フィル・アス・クラフィネイトだ。大丈夫、大丈夫。

停止した思考を復旧させた。大丈夫。