それでも歯車は回っていく3 〜王国滅亡編・下〜

「まずはいつもの部屋に行ってもいいかな。」



「いつもの?…ああ!なるほど。いいですよ。」



確認をするオウナさんに、お姉様は笑顔で承諾した。



よくよく思い返すと、さっきのアプローチも、何年も過ごしたはずの廊下も案外広い。王宮には敵わないんだけどね。でも、今更ながらこの孤児院は大きめだということに気がついた。



「それだけ視野が狭かったのかな。」



見上げた天井も、昔より高いと思った。いや、単に私が低くなっているだけだろう。そう言い聞かせる。



「着きました。…オウナちゃん。」



この部屋は、何でもいいけど術式をかけないと入れない。こういった孤児院の細工は、ユキナさんが仕込んだと言われている。



「光(フラッシュ)」



小さく光って開いた部屋は、孤児院の練習場だった。



「懐かしいんじゃない?フィー。」



「…はい、まあ。」



私の時も、素質があると認められると、希望者は8歳前後で術式の練習を始めた。大人になった時に間違った術式の使い方をしないようにと始まったことらしい。
でもそれは主に、術式に長けていたユキナさんが主体でやっていたことだし、ユキナさんの死後はやっていなかったはず…。



「…オウナさん。今は誰が指導を?」



「基本的にはここの出身者よ。訓練場は全員ボランティア。私も含めてね。子ども2〜3人に1人は大人を付けているの。」



見れば歳が離れすぎてわからない人と、当時私を指差していた人を含めて5、6人いた。