「上級、瞬間移動。」



目の前に現れた、桜髪。



「あっ、ギリギリセーフかな?」



「えっ?オウナさんだったの!?」



彼女はオウナ・ハーツ。私の六つ年上で、少し前まで育児休暇を取っていたらしいけど、特攻隊の一員で今は私の右腕の副隊長を務めて貰っている。この孤児院では2、3ヶ月くらいだけど、一緒に生活していた。



「遅れてごめんね!!フィーネちゃん!アスレイちゃん!娘が離してくれなくて。出かけるのに手間取ったの。」



私をフィーネ、お姉様をアスレイと、孤児院時代の名で呼ぶのも彼女くらい。オウナさんなら、敬語なしで壁のない会話だって嬉しかったりするし、遅れたくらいで罪に問う気は更々ない。



「いえ、こちらから呼び出したのです。忙しい中ありがとうございます。」



「そんなそんな、王妃自ら頭を下げないでくださいよ(笑)」



「そう、ですか…。」



「ところで、フィーネちゃんどうして車椅子を?」



「あはは、ちょっと怪我して…。」



苦笑いで答えると、それ以上は何も聞いてこなかった。オウナさんは察しがいい人だったから、何か勘付いたのかもしれない。



「では行きましょう。時間も限られていますから。」


「はい。」



「了解。」