「…結局、私の足の治し方ってわからないんですよね。」



今の私の足には、精霊回路が無い。



というより、消えたという表現の方が正しい。

この前の戦争が終わってひと段落つきかけた頃、スズさんが会いに来る直前で唐突になくなってしまったからだ。
原因は長年水神を身に宿していた代償と予測され、なくなった所為で自由に足を動かすことができなくなってしまった。それもあって、最大精霊保有量が減っているらしい。それでも、常人の比ではないとのこと。



術式での移動は可能だけど、使った反動でまた体のどこかが動かなくなるのは怖い。だから私はその日以来、必要最小限この部屋を出なくなっていた。



「それが、完全に可能性がないとは言い切れないようです。」



「ッ!?それは、本当ですか…。」



耳を疑いかけて言葉に危うく手の力が抜けて、資料等を床に落としそうになった。



「ええ。孤児院時代のフィーを庇い、亡くなった悪魔のユキナ・アルマイラを覚えていますか?」



「ええ、忘れるわけないですよ。」



実際どこまでが本気か。今となっては分からないけど、悪魔を裏切ってまで私を生かしてくれた、孤児院時代だけならお姉様を超えるくらいの大恩人。



「彼女は、悪魔の中でも1、2を争う情報通でした。フィーの足を治すこと、よう精当主の決定的な倒し方。そうでなくても、どんな些細なことでもいいのでその資料が欲しい。なので一度、最後の生活拠点にしていた孤児院を訪ねてみます。」



「それで、私も一緒にと1週間通ったんですか?」



「フィーがいないと情報が手に入らないだろうと、ある人から聞きましたので。」




そんなガセかも知れないこと、誰から聞いたんだろう。



「私も。なんて、罠かもしれませんよ?」



一瞬驚いてから、クスッと笑った。何か変なことを言っただろうか。



「まあ、彼女が罠に嵌めるとは思いませんが、それでも、別件でスズさんから少し気になる情報を頂いたので。」



「……。」



「さて。準備をする必要が出たので、明日のお昼に行きましょう。文句は言わせません。」



結局、有無を言わせないお姉様に折れてしまった自分がいた。