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「…そっか。嫌な夢、見たな…。」



目が覚めて起き上がり、辺りを見回す。ここは、王宮に与えられえた私の部屋。



「今の、見せていたんでしょう。…何も言わないんですね。」



自由に会話できるようになったはずの水神様も何を思ってかだんまりだった。




「コンコン…コンコンコン。」



いやに響く、ノック音。



誰かが来た。わかってる。



でも私は、居留守を使った。



スズさんが来て1週間。私はアレクシア邸に帰る気にもなれず、こうして王宮に用意されていた自室で篭ることしかできなかった。



「フィー!今日こそあの孤児院に行かないかしら!!…入るわよ。」



まあ、マスターキーを持つお姉様たちには無意味だけど。



「…。」



せめてもの悪あがきで、狸寝入り。



「フィー、起きているのはわかっています。王妃が来てその態度。非礼を詫びろなんて言いません。ただ、もう少し頼って欲しいのです。兄や、旦那や、姉(わたし)を。」



「…。」



「知っていますよ。最近碌に食事も取らず、アレクシア邸にも戻っていないと。」



「……。」



「では、第2王女のフィーの仕事を負担する気はないのですが、貴族会中位辺りの年寄りたちが、私の元を押しかけてはくだらない話をしに来るのです。その息抜きに付き合ってください。」