──私に向けて。



「精霊力付与!!フィーネちゃん!」



立ち込める砂煙。ユキナさんの防御術式への精霊力付与で一命を取り留めたものの、普通なら胴体から真っ二つで死んでいたり、足一本持っていかれていた───普通の子なら。



「ゴホッ、ゴホッ。」



誰かに発動させられたかのように、無詠唱で自分に水の防御壁を作っていた。ユキナさんの防御術式も相まって、起き上がれないにしても一切の擦過傷を残さなかった。



「タイガ!」



「いや、コントロールミスっただけじゃん。」



子供のコントロールミスだと言えばそこまでだし、何より証拠が何もない。鼻で笑う彼に、ユキナさんは文句が言えない。怒鳴っても、叱ることができない。


「そう…タイガでコントロールミスをするくらいだし、的が遠かったのかもね!私はフィーネちゃんを送るけど、的は近づけるから、出来る子からやってみましょうすぐ戻るわ。」



孤児院の中で、正面の的を見ながら後ろの私に当てるという視覚外へ術式を操作するなんて芸当ができるのは私と彼くらい。ユキナさんの圧もあって、他の皆は的を外したとしても正面にだけ飛んでいった。



「フィーネちゃん、お部屋に行こっか。」



皆が練習をする中、起き上がれない私を優しく抱き上げたユキナさん。安心した私は気を失った。