「 あ、そうだ結 」 その言葉の後に洸くんは私を振り返って人懐こい笑みを浮かべた。
「 ねえ、俺と友達になんない? 」
朝に見た時と同じ、真っ白な八重歯を覗かせて。
そんな言葉を投げかけてきたんだ。
それにつられるようにして梢枝ちゃんも
「 おいコラ洸!抜けがけは許さへんで。
あたしとも友達になってや、ユーイ 」
また、笑ってくれた。
人にこんな風にして笑顔を向けてもらうのって何年ぶりかな…。
答えは決まってるよ。
「 私でよければ、お友達に…なりたい! 」
登校初日、私に友達がいっぺんに二人もできた特別な日になった。
洸くんと梢枝ちゃんの背に広がるのは
青く雲一つない晴天。
夏が始まる前に私にだけ訪れた遅い遅い春。
また一つ、風が吹いたけど
その風は春よりも暖かい夏の風のような気がした。

