急に雨粒の感覚が無くなって、頭をあげると。
私より少し高いところに憎たらしくも傘をさした君のきょとんとした顔があった。
「誰を待ってたと思ってるの」
「わぁ、ネオちゃん美人なのに睨んだら凄く怖いね」
「それ貶してるの」
「褒めてるんだよ」
私は雨のせいで震えてるというのに、
当の本人はニコニコと笑って「昨日も傘持ってなかったから風邪ひきたいのかと思ったよ」なんて言っている。
「昨日はチハルも傘もってなかったじゃん」
「昨日は僕は雨に降られたい気分だったの」
「は?何それキモ」
「ふっ、嘘だよ。忘れてただけだから安心して」
昨日の君を思い出す。
昨日、君は本当に綺麗だったんだ。
少し茶色の髪の毛が雨に濡れて、前髪から水が滴り落ちて。その色素の薄い瞳はどこか切なそうで。
まるで、そう_
「チハルって、桜の妖精なの?」
桜の妖精のように。

