「彰?あの、一人で歩けるから………離して?」
「嫌だ、可憐、逃げるだろ」
可憐が手を離そうとするから、グッと握りしめた
本当は逃げるなんて思ってない
可憐はそんな事しない
ただ、俺が離したくないだけ
何度かこの攻防をして、可憐も俺も少し落ち着いてきた
可憐も諦めたみたいだ
手の中にある、小さな温もりだけが俺の心臓を煩くさせる
チラッと可憐を見た
身長は、俺の肩位
実際、可憐はそんなに背が高いわけでもない
でも、いつもピンと伸びた背中が身長までも高く見せる
髪の毛は今日は仕事帰りですぐ駆けつけたからか軽く横で結んでる程度
首元に残る後れ毛がなんだか色っぽくて視線を外した
可憐はこの状況に付いていけないのか時折、困った様に俺を見るけど俺は笑って誤魔化す
大きな瞳
形の良い鼻
白い肌がうっすらと赤く染まっている
可愛い
周りの奴等には可愛いだの、美人だの言われてたっけ
別に不細工だなんて思ったことはなかったけど……
可憐って………こんなに可愛かったっけ?
小さな公園の小さなベンチに腰かけた
コーヒーを買って酔い醒まし
可憐は「ありがとう」と受け取った
パチッとプルトップを開ける指は綺麗で長い
ゆっくりと、コーヒーに口を付けてホッと一息付く姿に見惚れた
「あ、彰?み、見すぎ……恥ずかしいんだけど」