そうして先にベッドに入って正広の横に潜り、掛け布団を肩までかける。いつものように私に背中を向けてスマートフォンを弄っているかと思ったのだけど、今夜は早くも寝息を立てていた。

「正広? 寝ちゃった?」

呼んでも動く気配がなく規則的な呼吸を繰り返す。どうやら本当に寝てしまったようだ。

また今夜も私は放っておかれるんだ。

先日久しぶりに触れ合ったというのに、以前のような関係に戻ってしまったようで悲しくなる。
私も正広も性欲が旺盛というわけじゃない。私も疲れているけれど、もちろん正広も疲れている。

明日も仕事なのだから早く寝なければいけないのだけれど、付き合い始めた学生の頃のようにお互いの身体を貪るようなセックスが忘れられない。
正広との恋人関係が再熱したと期待したのに。
だからもう一度愛されているのだと実感したかった。

ベッドに横になりながら薄暗い部屋の中でテレビの横に置かれたゴミ箱に視線を向けた。ゴミ箱の中には正広と武藤さんからそれぞれ貰ったホワイトデーの包み紙が捨てられている。ゴミ箱から覗くピンクの大きな布に武藤さんの顔が頭に浮かんだ。『特別な人』という意味をもつマカロンに、どうしてこれが正広から贈られたものじゃないのだろうと理不尽な怒りを覚えながら目を閉じた。