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七夕祭りの飾りつけが終了し明日から正式に告知をしようとしていた。完成した飾りつけを写真に撮ろうと私は再び銀翔街通りに来ていた。

「直矢さん」

「ああ、お疲れさまです」

信号横の飾りとマップを交互に見ながら最終確認している直矢さんに駆け寄ると笑顔で私を迎えてくれる。

「すみません、わざわざ写真撮影のために来ていただいて」

「いいえ。息抜きしたかったので大丈夫です」

そう言ってふと道路の向こうを見ると愛美さんが信号機の飾りの設置を眺めているのが目に入った。

今日も直矢さんの近くにいる……。

愛美さんも仕事なのだからここに居ることはおかしくない。それでもいい気分にはなれないことが私の心の狭さを感じて嫌になる。

「直矢さんはこの後別の打ち合わせですよね。あとの細かいことは私がやりますから」

「お願いします。仕事が終わったら今夜どこかに食事に行きましょう」

「はい」

直矢さんが少し顔を傾けて私の耳元に顔を寄せた。

「その時に美優の喜ぶかもしれない話があります」

「え? 何ですか?」

「今言ったらつまらないでしょう。それに美優が喜ぶかもしれない、ですよ。喜ばないかもしれないので今は言えません」

「もったいぶらないでください。気になってこの後の仕事が疎かになります」

直矢さんが困ったように笑うから私は「直矢さんのお話なら私は何だって嬉しいです」と答えた。
すると道路の向こうの愛美さんがこっちを見た。