私は小さく息を吸った。それをまたゆっくりと吐き出す。



「あるところに空飛ぶ少女がいました。少女は自由に、空を泳げます。

ある時、電柱で休んでいる鳩に問われました。「お嬢さん、なんで空を飛ぶんだい?」少女は答えました。それは私が空飛ぶ生き物だからよ、と。

そして少女は空を飛びました。高い高い空で烏に問われました。「あなたは何故こんな高いところを飛ぶのですか?」少女はまた答えました。私は世界が嫌いだからよ、と。

少女は飛べない人間の世界を嫌いました。

しかし烏がそんな事を聞くものだから、少女は少し低いところを飛びました。人間の世界を観察します。あぁあ、やっぱり退屈ね。そう言って高く飛ぼうとした時、下から人間の声がしました。

「君には、足があるじゃないか」










あぁ、なんと!
私には足があるじゃないか!踏み出せるじゃないか。歩き出そう。妄想はここまでだ。人間の世界を歩き出そう。


そう言って少女は大きく一歩を踏み出しました。」