美雨は自分の会話能力の低さに落ち込んでいた。
そして仕出かしてしまったことに、どう対処していいのか分からなかった。
もうワンちゃんのところには戻れない。
あんなに傷つけてしまった。
美雨は昔のことを思い出して胸がギューっと締め付けられるようだった。
小さい頃。まだ自分のことがよく分かっていなかった頃。
無邪気になんでも話していた。
それがいけなかった。
周りに気味が悪いと言われたのだ。
「なんでそんなことを知ってるの?」
「美雨ちゃんっていつも変なことばっかり言う。」
「気味悪い子ね。」
猫が教えてくれると言っても信じてもらえず気味悪がられるだけだった。
両親にさえ信じてもらえなかった時は目の前が真っ暗になった気がした。
自分は周りの子とは違う。
そう気づいた時は何もかもが遅く、美雨を見つけると、みんなそそくさと離れていってしまった。
だから話さなくなったのだ。
話さなければ余計なことも言わなくて済む。
ただ全く話さなくなってしまった美雨も結局は気味悪がられ、酷いことを言われることは無くなっても疎まれていた。
それを心配したおじいちゃんが一緒に住んでくれて、大人になったあとも警察関係の仕事を紹介してくれた。
警察の人だった。おじいちゃん。
いつも優しくて頼り甲斐があって。
温かいぬくもりをくれた。
おじいちゃんが亡くなって、居場所がどこにもなくて………。
ワンちゃんならって思えたのに。
自分が壊してしまった。
猫から聞いたことなんて話さなければ良かった。