睨んでいた美雨はいつの間にか再び豆大福に釘付けになっていた。

 写真には一切目もくれない。

 睨んでいた目つきが和らげば、ますます可愛らしい顔立ち。

「そうかそうか。食べたいのか。いいぞ。
 ワンちゃんお茶も入れてやりなさい。」

 犬飼という名から親しい人はワンちゃんと呼ぶ人もいる。
 じいさんもそうだ。

 ただ先ほどの捜査一課の奴らのように馬鹿にした呼び方をする奴もいる。

 思い出すだけで胸くそ悪くなると美雨に入れたお茶を乱暴に置いた。
 それでも美雨は目をキラキラさせている。

「可愛いねぇ。よっぽど好きなんじゃな。」

 孫を見るように目を細めてじいさんは美雨を眺めた。

 じいさんに孫がいればこのくらいの年なのかもしれない。
 いやそんなわけないか………忘れてた。

 28歳だったこいつ。孫って歳じゃないな。

 お茶とともに渡された豆大福。
 口元に白い粉がつくのもお構いなしに頬張る姿はとても28歳に見えない。

「年齢がただの数字の羅列だと今さらながらに再確認する気分だ…。」

 年齢、学歴、肩書き。

 全てが無駄なモノだとここ数年で体に刻み込まれていた。