麗華は何枚かに及ぶ資料を犬飼に渡した。

「何匹分の猫の血かってことまでは分からなかったわ。
 力になれなくてごめんなさい。
 でも相当の数ね。数十匹はくだらないわ。」

「いや。無理言って悪かった。
 かなりの数だろうとは思ったんだが…。」

「猫の数が何か関係するの?」

「いや………。」

 犬飼は考え込んで黙ってしまった。


「じゃまた何か調べて欲しかったら言ってね。」

 鑑識課を出て行く時に麗華にそう声をかけられても、何も返事をせずに考え込んだまま気もそぞろな犬飼は外へと歩いて行く。

 美雨は何も言わずに犬飼のあとを歩いた。

 向かった先は木村さんの家。
 意を決した犬飼はインターホンに手を伸ばした。

「はい。あ、前にいらした刑事さん。」

 また怯えた声を出す木村さんが扉を開けてくれた。

「今日は、前に気になったことをお伺いしたくて。
 たくさんの猫を保護されて、里親を探すボランティアもされてるということですが、だから空のゲージが何個も置いてあるんですか?」

 迷いが生じないうちに一気にそこまで話すと木村さんを観察する。

 本当はそんなことはしたくない。

 疑わしい人がいい人なんて、こういう時になんで刑事なんてやっているんだろうと思ってしまう。

 観察している木村さんはやはり怯えて、口ごもり何か隠しているのが火を見るよりも明らかだ。

 沈黙を破ったのは犬飼でも木村さんでもなく美雨だった。

「ワンちゃんいい人。だから大丈夫。」