布団を買い、それをアパートに置いてから署に行くことにした。
 その旨を伝えれば、電話に出たじいさんにホクホクした声で対応された。

「そうか。美雨ちゃんをな。
 そうか。そうか。
 いい布団買ってやれよ。」

 だよな。アドバイスそこくらいだよな。
 呑気な返事に今さら驚きもしなかった。

 布団を買ってアパートに戻ると嬉しそうな美雨がベッドのすぐ隣に敷き始めた。
 それももう驚かない。
 そこくらいしか敷けるところもない。

 試しに寝転がってみる美雨が本当にガキみたいに見えて苦笑してしまう。

 布団以外にも他の着替えなんかをずっと預けっぱなしだったコインロッカーから持ってきた。
 犬飼ももうどうにでもなれ。とヤケクソ気味だった。

 布団に転がった美雨が
「ワンちゃんもベッドに寝てみて!」
 と、嬉しそうに催促する。

 めんどくさそうに、いや、本気で面倒だったのだが、ベッドに横になった。
 久々のベッドが心地いい。

 僅かでもベッドから腕がはみ出れば、下に寝ている美雨の頭に直撃しそうだ。
 からかい半分にわざと寝返りをうって、腕を頭に当てる。

「むぅ。痛い……。」

「ハハッ。俺、こっちで良かった。
 俺、寝相悪いし、腕も誰かと違って長いからよ。
 寝てる時に頭たたいたらゴメンな。」

 半笑いしながら下の布団で寝転がっている美雨の頭をグリグリする。

 すると、その腕を取られギュッと握られた。

「な、んだよ。」

「マーキング………したかったなぁ。」

 っだぁー。まだそれ言うか。

 聞こえないふりをしても
「いいなぁ。恋人のしるし」
 なんて口走る。

「だいたいあんなの男が女につける……もんだ…ろ。」

 やっべ。今、自分で余計なこと口走った。

 男が女に……男が……とブツブツ言う美雨に嫌な予感がする。

 ぱぁーっと顔を明るくして、髪を手で束ねて首元を犬飼に向けてきた。

「つけて!大事にする。」

 大事にって……プッと吹き出すと、それが引き金になってアハハハッと大笑いしてしまった。