午後、男の子との約束の時間までまだ時間がある。
 時間までは男の子が言っていた『猫を消すおばさん』の聞き込みをすることにした。

「この辺りで急に猫が居なくなるってことがあるんですか?」

 声をかけたのは、いかにも噂好きっぽい年配の女性3人組。
 警察手帳を見せると驚いた顔をする。

「まぁ。刑事さんが調べてるってことは本当なのかしら。
 私もそういう噂、聞いたことあるわ。」

「そうそう。平井さんもそれですごく心配してたわよね。」

 そうか。この辺りで猫を探してたからな。平井さんも。

「でもその噂って猫を保護してる人が野良猫を連れていくからって聞いたことあるけど。」

「それ。詳しく教えてくれませんか?」

 3人の中でも恰幅がいい人が噂の真相らしきものを話してくれた。

 なんでも木村さんという人が野良猫を保護して里親を探したり、世話をしたりしているらしかった。
 もしそうなら、それで猫が消えるだなんて、とんだお門違いもいいところだ。

 しかし…。
 血の海だった向こうの事件。
 あれだけの猫の血が海のようだった。

 死体がなかったとは言え、大量の猫が死んだと考えるのが普通だ。
 そうなれば猫が消えているはず。

 今回の平井さんの迷い猫とは関係は無さそうだった『猫を消すおばさん』
 血の海の方では関わりがあるのだろうか。

 ふいに袖が引っ張られ美雨を見れば犬飼の時計を指差していた。
 時刻はもうすぐ3時半。
 男の子と約束した時間だ。

 お互いに無言のまま、約束した場所に向かった。