部署に行くとちょうど会いたかったメンバーが席にいた。
恩田 大輝(おんだ たいき)と栗山 陽菜(くりやま はるな)だ。
失せ物ではペアのことが多く、この2人も相方同士だ。
だからこそ、今まで1人で気ままに仕事をしていた犬飼に新しく来た美雨が相方になったのだが…。
どうせ相方ならもっとマシな奴にしてくれよ。せめて意思の疎通が図れる奴!
そう苦々しく思っても辞令なのだから従うより他なかった。
「あ、ワンちゃん。ちょうどいいところに来たわ。渡したい物があったの。」
栗山が渡してきたのは犬飼も渡された資料と同じ物にたくさんの書き込みがしてあるものだった。
「あぁ。サンキュ。欲しいと思ってた。」
隣にいる恩田は特に何も話さず2人のやり取りを見ているだけ。もちろん美雨も。
恩田は俗に言う『カメラアイ』
一瞬見ただけのものでも鮮明に細部にわたって覚えておくことができる。
その能力を使って、写真や資料では分かりづらい部分などを思い出して書き込んでくれるのだ。
ただ、恩田は『カメラアイ』と引き換えと思えるほどに言語能力やコミュニティ能力は低い。
人間1つ得れば1つ失うようにできているのだと犬飼は思っていた。
何か特殊な能力を持つ人は大抵があどけなさが残る少年少女のまま大人になったような人達だった。
恩田は短い髪に身長は犬飼と同じくらいでスラッと高いのだが、幼く感じてしまう。
まぁ見た目よりも中から滲み出てると言いたくなる幼さだからなのだが。
そしてだからこそ美雨が『動物と会話できる』というのも、あながち嘘ではないのかもしれないと思ってしまう。
こいつ、そんな素振りは一切見せないけどな。
じいさんから『動物と会話できる』と紹介を受けただけで、動物と会話できれば解決できそうな打ってつけの事件を前にしても何もそれらしいことは口にしなかった。
恩田とペアになっている栗山の大変さを身をもって感じた犬飼は栗山に最大限の敬意を払いたい気持ちだった。
栗山は肩につかない程度の重めのボブ。
一重の切れ長な目で外国での方がモテるのよね私。と言うのも頷ける顔立ち。
サラサラとこぼれる髪を耳にかけながら、犬飼に付け加えた。
「他にも気になることがあったら聞いて。
恩ちゃんに聞いてみるから。」
「あぁ。ありがとう。
まずは書き込んでくれたとこに目を通してみる。」
恩田はただ鮮明に覚えているだけ。
それを聞き出して書き込むのは栗山だ。
そんな風に特殊で魅力的な能力が備わっているのに、うまく活用できない当人に代わって、犬飼や栗山のようなごく普通の人がサポートするような形になっていた。
資料に目を通すと、気になっていた点が書き込まれていた。
「やっぱり顔にかかっていたのは庭の砂か…。」
周りには猫の足跡が大量にあり、血の海のような部分と、そうでない部分もあった。
その血がない部分には何かで掻いた跡があり、その近くにある顔に砂がかかっていた。
それはまるで、猫がトイレをした後や、はたまた嫌な物に砂をかける行為をした後のような…。
ふと、犬飼以上にこの事件に興味が無さそうな美雨が視界に入った。
だいたい興味ないなら、あの現場にどうしていたんだよ。
初めて会ったのは異様な血の海を眺めていた美雨を抱きかかえて、その場から離した時だ。
聞くともなしに質問を投げてみる。
恩田と栗山は先ほど、他の仕事へ向かい、この部屋には犬飼と美雨だけだ。
「なぁ。お前はどう思う?」
チラリとやる気のない目線を向けられて、やる気なく口が開いた。
「私、その人キライ。」
なんだよ。嫌いって。
そもそもやっぱり話せるんじゃねーかよ。
なんとなく、他に人がいない時、もしくは気の許せる相手だけの時は話すようだと美雨の行動が読めるようになっていた。
つまりは犬飼にはかなり気を許しているということになる。
だいたい気を許してるっていうか…。
昨晩から今朝までの大惨事を思い出しそうになって、急いで頭から排除した。
あんなの、ただの戯言だ。
それでもなんとなくネクタイをもう一度きつく締め直した。
恩田 大輝(おんだ たいき)と栗山 陽菜(くりやま はるな)だ。
失せ物ではペアのことが多く、この2人も相方同士だ。
だからこそ、今まで1人で気ままに仕事をしていた犬飼に新しく来た美雨が相方になったのだが…。
どうせ相方ならもっとマシな奴にしてくれよ。せめて意思の疎通が図れる奴!
そう苦々しく思っても辞令なのだから従うより他なかった。
「あ、ワンちゃん。ちょうどいいところに来たわ。渡したい物があったの。」
栗山が渡してきたのは犬飼も渡された資料と同じ物にたくさんの書き込みがしてあるものだった。
「あぁ。サンキュ。欲しいと思ってた。」
隣にいる恩田は特に何も話さず2人のやり取りを見ているだけ。もちろん美雨も。
恩田は俗に言う『カメラアイ』
一瞬見ただけのものでも鮮明に細部にわたって覚えておくことができる。
その能力を使って、写真や資料では分かりづらい部分などを思い出して書き込んでくれるのだ。
ただ、恩田は『カメラアイ』と引き換えと思えるほどに言語能力やコミュニティ能力は低い。
人間1つ得れば1つ失うようにできているのだと犬飼は思っていた。
何か特殊な能力を持つ人は大抵があどけなさが残る少年少女のまま大人になったような人達だった。
恩田は短い髪に身長は犬飼と同じくらいでスラッと高いのだが、幼く感じてしまう。
まぁ見た目よりも中から滲み出てると言いたくなる幼さだからなのだが。
そしてだからこそ美雨が『動物と会話できる』というのも、あながち嘘ではないのかもしれないと思ってしまう。
こいつ、そんな素振りは一切見せないけどな。
じいさんから『動物と会話できる』と紹介を受けただけで、動物と会話できれば解決できそうな打ってつけの事件を前にしても何もそれらしいことは口にしなかった。
恩田とペアになっている栗山の大変さを身をもって感じた犬飼は栗山に最大限の敬意を払いたい気持ちだった。
栗山は肩につかない程度の重めのボブ。
一重の切れ長な目で外国での方がモテるのよね私。と言うのも頷ける顔立ち。
サラサラとこぼれる髪を耳にかけながら、犬飼に付け加えた。
「他にも気になることがあったら聞いて。
恩ちゃんに聞いてみるから。」
「あぁ。ありがとう。
まずは書き込んでくれたとこに目を通してみる。」
恩田はただ鮮明に覚えているだけ。
それを聞き出して書き込むのは栗山だ。
そんな風に特殊で魅力的な能力が備わっているのに、うまく活用できない当人に代わって、犬飼や栗山のようなごく普通の人がサポートするような形になっていた。
資料に目を通すと、気になっていた点が書き込まれていた。
「やっぱり顔にかかっていたのは庭の砂か…。」
周りには猫の足跡が大量にあり、血の海のような部分と、そうでない部分もあった。
その血がない部分には何かで掻いた跡があり、その近くにある顔に砂がかかっていた。
それはまるで、猫がトイレをした後や、はたまた嫌な物に砂をかける行為をした後のような…。
ふと、犬飼以上にこの事件に興味が無さそうな美雨が視界に入った。
だいたい興味ないなら、あの現場にどうしていたんだよ。
初めて会ったのは異様な血の海を眺めていた美雨を抱きかかえて、その場から離した時だ。
聞くともなしに質問を投げてみる。
恩田と栗山は先ほど、他の仕事へ向かい、この部屋には犬飼と美雨だけだ。
「なぁ。お前はどう思う?」
チラリとやる気のない目線を向けられて、やる気なく口が開いた。
「私、その人キライ。」
なんだよ。嫌いって。
そもそもやっぱり話せるんじゃねーかよ。
なんとなく、他に人がいない時、もしくは気の許せる相手だけの時は話すようだと美雨の行動が読めるようになっていた。
つまりは犬飼にはかなり気を許しているということになる。
だいたい気を許してるっていうか…。
昨晩から今朝までの大惨事を思い出しそうになって、急いで頭から排除した。
あんなの、ただの戯言だ。
それでもなんとなくネクタイをもう一度きつく締め直した。