「いいから、上着羽織れ。
早く取って来ないと置いて行くぞ。」

フイッと私に背を向けて、スマホをいじり出す将ちゃん。


「……。
将ちゃん、怒ってるの?」

なんか、いつもと…。昨日までと違う。
明るく私をからかう様に笑ってくれる将ちゃんじゃなくて、悲しい気持ちになる。
せっかくデート、楽しみにしていたのに…。


「怒ってねぇよ。…ただ、……。」

「?……ただ?」

「…これから行くショッピングモール、冷房強いから身体が冷えると良くないだろ?…。
…だからだよ。」

しゅんとしている私を察したのか、将ちゃんは背を向けたままそう言った。


……そっか。
私を気遣って、言ってくれたんだよね?


「……わかった。
上着、取ってくるね…!」

何だか違和感を感じながらも私は将ちゃんの優しさだと受け取る事にして、気を取り直すと上着を取りに部屋に戻った。