銀色の月は太陽の隣で笑う


しかし衝撃に耐え切れずひっくり返ったトーマは、ルウンからタックルを食らった箇所だけでなく、ひっくり返った拍子にぶつけた背中や後頭部にも鈍い痛みが広がっていくのを感じた。

けれどルウンには、それを気にかける余裕はない。


「トウマ……!」


今度はしっかりとした声で名前を呼んで、飛び込んだ胸元に顔を押し付ける。

夢でも、幻でもなかった。トーマの心臓は、間違いなく動いている。少し早いその音が、ルウンの耳にも確かに届いていた。

その鼓動を感じたあとは、顔を上げてトーマを見つめる。

ジッと見つめると、トーマの肩がビクッと揺れて、また少し鼓動が早くなった。

確かにここに居るのだと分かった途端、ルウンの中で押さえ込んでいたものが溢れ出す。もう、止められなかった。


「……トウマ」


もう一度、しがみつくようにして両腕を回したら、トーマの鼓動がこれ以上ないくらい早まった。

けれどルウンにとっては、それはトーマの存在を確認できる音でしかないので、特に気にはしない。だから、トーマがやや焦ったように「ルンっ……!」と呼んでも、離すつもりはなかった。