銀色の月は太陽の隣で笑う


またこみ上げそうになったものを振り払うように、ルウンは急いで視線を外す。

けれど、何かが引っかかってもう一度、今度は少し窓に顔を寄せて同じ場所を見つめた。

何かがある。いや、何かが――誰かがいる。

微動だにしないから初めはただの影かと思ったが、そこに影ができるようなものは近くにない。

そうだ、あれは――影ではない。

脳が理解した途端、ルウンは窓から離れて飛ぶように部屋を横切る。

胸にしっかりと紙を抱いたまま、体当たりする勢いで扉を開けて外に出ると、勢い余って前のめりになった体を何とか転ぶ前に立て直し、しっかりとその場所を見据えた。

地面に座り込み、ぼんやりと月を見上げる姿に、胸がいっぱいになる。――やっぱり、さようならではなかったのだと。

走り出したい気持ちを抑え込んで、あえてゆっくりと歩いていく。

もしもこれが夢だとしたら、きっと走り出した途端にその姿は消えてしまうから。それが怖くて、これは現実であると確かめるように、その姿をしっかりと視界に捉えたまま進んでいく。