銀色の月は太陽の隣で笑う


寂しい。一人ぼっちは、とても寂しい。


”だって一人ぼっちは、とても寂しいものだから”

“会えてよかった”


蘇るのは、トーマが語って聞かせてくれた、雨季の始まりだという物語に登場する少女の言葉。

今ならば、少女の言葉の意味がよく分かる。いなくなった少女を思って、雨を呼び寄せてしまうほどに泣いた魔法使いの気持ちが、とてもよく分かる。

もう二度と、会えないのだろうか――不安が大きく口を開けてルウンを飲み込んでいく。

胸にぽっかりと穴が空いて、今まで貯めてきた温かなものが全部流れ出てしまうような、そんな感覚に襲われる。
こうやって少しずつ、全てが元通りになっていくのかと思った。

トーマと過ごした温かな日々が遠い思い出となり、また一人きりで過ごす日常が戻って来るのかと。もう、前のように一人ぼっちではいられないのに――。

夕焼けに染まっていた空が、徐々に色を変えていく。朱から紫へ、紫から紺へ、段々と夜の色へと。

徐に立ち上がったルウンは、フラフラとおぼつかない足取りで屋根裏へと続く階段を上った。