目が合ってしまったからには無視するわけにもいかず、トーマは僅かに苦笑して寝室へと足を踏み入れる。

その瞬間、ルウンの表情が嬉しそうに緩んだ。

そんなに嬉しそうな顔をされてしまったら、抑えられなくなってしまう。

これくらいならいいかな、と遠慮がちに伸ばした手で、トーマはルウンの頭をそっと撫でた。


「おやすみ、ルン」


熱で潤み、いつもの何倍も輝いて見える瞳が、やはりとても綺麗だと思った。神秘的なその色が、星屑を散りばめたような輝きが、トーマの心を惹きつける。

トーマの胸の内も、そこで密かに繰り広げられている葛藤も、知る由もないルウンは、撫でられる感触に浸るように目を閉じた。

温かい手の平が、何度も何度も、優しく頭を撫でていく。心地よくて、安心して、次第に眠たくなってくる。

それを見計らったかのように、また優しい声音で“おやすみ”と声が聞こえた。

眠るルウンの頭を撫で続けながら、トーマは小さく息を吐く。

白銀の髪の上を、自分の手の平が滑っていた。何度も、何度も、触れすぎないように、細心の注意を払って優しく。

その手が、いつの間にか頬に伸びていた。

触れそうになって驚いて、慌てて手を引っ込める。そしてまた、ため息を一つついた。

悩ましげな、ため息を――――。