やがて彼女も妙齢の女性になって、一人で森までやってくることができなくなったんだ。
それを知った魔法使いは、変わらず鳥に姿を変えて、今度は自分が彼女の元を訪れた。
人目につかない夜更け、月光を背にして、鳥になった魔法使いは彼女の元へと飛ぶ。
もう一緒に歩くことができなくなると、彼女はよく喋るようになった。一緒にいる時間を、他愛ないお喋りで埋めたんだ。
魔法使いは変わらず、返事をすることも相槌を打つこともなかったけど、それでも彼女の話をしっかりと聞いていた。
これまでと形は変わってしまったけど、変わらない穏やかな日々は、魔法使いの安らぎだったんだ。
そんなある日、森の奥の自分の家で、魔法使いは妙な胸騒ぎを覚えた。それは、心臓が嫌な音を立てるような悪い予感。
魔法使いの予感はよく当たるから、彼の中に言い知れぬ不安が芽生えた。
でも、人目の多い昼間に出歩くことはできない。だから魔法使いは、悪い予感を抱えながら、ひたすらに夜を待ったんだ。
そしてようやく、待ちわびた夜更け。
鳥に姿を変えるのももどかしく、そのまま空に舞い上がった魔法使いは、月光を背にして彼女の元に飛んだ。
けれどその日、彼女の部屋の窓は開いていなかった。
いつも魔法使いを迎え入れるように開かれている窓が、今日はぴったりと閉じられていたんだ。
膨れ上がる不安の中、魔法使いは魔法でそっと窓を開けた。静まり返った部屋の中に、人の気配は全くしない。
すっかり夜の闇に沈んだ家のどこにも、彼女の姿はなかったんだ――。



