銀色の月は太陽の隣で笑う


魔法使いにとっての密やかな安らぎ、穏やかな日々にも、やがて終わりの足音が近づいてくる。

なぜってそれはね、二人の生きる時間が違うからなんだ。

普通の人と違って、体内に不思議な力を宿して生まれてくる魔法使い達は、その力のおかげで長命だった。人にしてみれば、永遠にも思えるような長い長い時間を生きていたんだ。

もちろん彼も例に漏れず、特に強い力を持っていたが為に、他の魔法使い達と比べてもより長命だった。

少女が大人の女性になっても、魔法使いは出会った頃とほとんど見た目が変わらない。どんなに強い力を持っていても、時間だけはどうすることもできないんだ。

それでも少女は、すっかり大人の女性に成長しても、変わらず森に通い続けた。だから魔法使いも、変わらず鳥になって彼女を出口まで導いたんだ。

この穏やかな日々が、できるだけ長く続くことを願いながら。

けれど、どんなに魔法使いが願おうと、時間は刻一刻と過ぎて行く。魔法使いの時間は嫌になるほどゆっくりと、しかし彼女の時間は驚く程に速く。

それでも彼女は変わらずに森へと足を運び、やって来た鳥に出口へと導かれ、“ありがとう。またね”と去って行くんだ。

魔法使いは、この日々を失いたくなかった。

でも、彼女がただの人であることを変えられないように、彼が魔法使いでなくなることもできない。

彼女の優しさに触れるうち、一人ぼっちの寂しさを知ってしまった魔法使いは、その優しさに触れられなくなるのが怖くなっていったんだ。

一人ぼっちに戻るのが、どうしようもなく怖かった。