野菜と水を鍋にブチ込むだけだから、どんなバカでも作れると女将が豪語した通り、出汁にはちゃんと野菜の旨みが出ているし、ミルクの自然な甘みも相まってとても優しいお味に仕上がっている。
けれどトーマは、ルウンの笑顔に平常心が保てなくなり、味を堪能する余裕もなかった。
口内のヒリヒリするような痛みを必死に隠して、ひとまずトーマは、驚いたように自分を見つめているルウンに笑いかける。
「トウマ……顔、赤い?」
「えっ、そう?急いでスープ飲んだからかな」
言い方が妙に白々しくなってしまったが、ルウンは特に気に留めた様子もなく、むしろ納得したように頷いた。
スプーンで掬う量はほんの少しだが、そのほんの少しをルウンは何度も口に運ぶ。
二人の間に流れる穏やかな無言の時間が、次第にトーマに平常心を取り戻させる。
「無理しなくていいからね。食べられる分だけ食べてくれたらいいよ」
ゆっくりと頷いたルウンは、また少しスープを掬って口に運ぶ。食欲はなくとも、スープならば食べやすかった。
ゆっくり、ゆっくり食事を進めるルウンを、トーマは黙って見守る。



