「先に切っておけばよかった……あっつ!」
手際があまりよくないことについては、女将からも手厳しく指摘されたことだが、こればかりはどうしようもない。
切った野菜を片手鍋に入れ、そこにスープを注いでミルクも加える。ひと煮立ちさせて塩と胡椒で味を整えたら、器に盛って完成。
「うん。まあ……いいと思う。女将にはどやされそうだけど」
手際と見た目を置いておけば、味はそこそこ。二人分の器とスプーンをお盆に載せて、トーマはそうっと寝室に向かう。
「お待たせ」
声をかけながら寝室に入ると、ぼうっと天井を見上げていたルウンの視線が動いた。
「……いい匂い、した」
それだけでなんだか嬉しくなって、思わずトーマの頬が緩む。
「起きられる?」
返事の代わりに、ルウンはゆっくりと体を起こした。
「大丈夫?ふらふらしない?」
コクっと小さく頷いたルウンは、トーマが手にしているお盆を興味深げに見つめる。
「あんまり期待しないでね」
トーマは、苦笑しながらそっとルウンの膝にお盆を載せた。
「熱いから気をつけて。あと……美味しくなかったら、無理して食べなくていいからね」



