「ルン、しっかり」
何とか体に力を込めようとするのだが、まるで自分の体ではないみたいに重たくて、ちっとも力が入らない。
おまけに、とても熱かった。昨日の夜は、寒くて寒くて堪らなかったはずなのに。
「ごめんね。でも、ちょっとだけ我慢して」
ぐったりと力の抜けたルウンの背中を片腕で支え、もう片方を膝裏に通して、トーマはその小さな体を抱き上げる。
なるべく揺らさないようにゆっくりと歩いて部屋を横切り、寝室の前で一旦足を止めた。
「ルン、ここからベッドまで歩けそう?」
何とか頷いてみせたけれど、やっぱり体には力が入らない。
しばらく様子を見ていたトーマは、やがて意を決して
「寝室、入らせてもらうけど許してね」
一言断りを入れてから足を踏み出した。
初めて入ったルウンの寝室は、トーマの予想に反して、およそ女の子らしいと言えそうな物が一つもない。
例えば、くまやうさぎのぬいぐるみ。例えば、可愛らしい模様のカーテン。例えば、色つきのベッドカバー。
想像していたよりだいぶ殺風景な部屋を、トーマはゆっくりと進んでいく。



