「そっか。なら、いいんだ」


不思議そうな顔で首を傾げるルウンに、トーマはひとまず笑顔を返す。

今のところ、無理をしているようには見えないから、ここはトーマも引くしかない。

それに、心配しすぎという可能性も否めなかった。


「でも、少しでも体調がおかしいなって思ったらすぐに教えて。あと今日は、なるべく早めにベッドに入って、温かくして眠ることをオススメするよ」


なんだかよく分からないままに、とりあえずルウンは頷いておく。

体調が少しでもおかしいとは、この頭がぽうっとする感じも含まれるのだろうか――。聞こうかどうしようか迷ったけれど、結局開いた口には食べかけの焼き菓子を入れて塞いでしまう。

多分、大丈夫なのだ。これくらいのこと、今まで何度も経験済みだし、その度に何とかなってきた。

だからこれは、伝える必要はない。

ルウンは、はぐっとお菓子を噛み締めて、バターの風味と、鼻に抜けていく爽やかなレモンを楽しむ。

味は、甘くてしょっぱい。次から次へと手を伸ばしたくなってしまう味。

今日も美味しく出来たようで良かったと安堵しながら、ルウンはカップへ手を伸ばす。