ショウガとレモンがたっぷりのお茶は、体を内側から温めてくれる。

雨ですっかり冷えてしまった二人には、その温かさが心地いい。

一口飲んでふうっと息を吐き、また一口飲んでは息を吐く。そうやってゆっくりゆっくりと、二人は体を温めた。

今日のお茶のお供は、厚さ一cm程の丸い焼き菓子。バターに砂糖、塩と卵と小麦粉というシンプルな材料に、レモンの皮のすりおろしを加えて作られたそのお菓子は、まだほのかに温かい。


「うん、バターの風味が凄くいいね。あとこの、甘くてしょっぱい感じが凄く美味しいよ」


感想のあとにお茶を飲み、トーマはまた一つ焼き菓子を手に取る。

ルウンもまた、お茶を一口飲んでからお菓子を手に取り、小さな口で齧り付いた。

歯に当たってサクッと崩れたお菓子は、レモンの爽やかな香りがして、バターの風味も広がる。トーマの言った通り、味は甘くてしょっぱい。

ルウンが満足げにふっと頬を緩めると、それを見たトーマが「美味しいね」と笑った。

とても、穏やかな時間が流れる。

二人の間の沈黙を紛らわすのは、降り続ける雨の音だけ。