困り顔でしばらく洗濯カゴを見下ろしていたルウンは、ひとまずその問題は先送りにすることにして、キッチンに向かった。

ひょこっと顔を出すと、気がついたトーマがすかさず


「ルン、さっきくしゃみしてなかった?大丈夫?」


なんと耳がいいことかと驚きながらも、ルウンはコクりと頷き返す。


「ここ、火のおかげで温かいよ」


ちょいちょいと手招きされて近づけば、確かにとっても温かい。


「僕も着替えてくるね。すぐに戻ってくるけど、何かあったらすぐに呼んで。あと、お湯はもう少しかな」


コクっと頷いて見送ると、トーマはキッチンを出て屋根裏への階段を上っていく。

真っ直ぐにベッドに向かって、枕元に置いてあるバッグを引き寄せると、中から今身につけているものと何ら変わりない色とデザインの着替えを一式取り出す。

軽くて丈夫で肌触りもいいことから、旅人になる前、まだ故郷にいた頃からのお気に入りの品だった。

濡れたものを脱いで体をよく拭いたあとに、新しい服を身につける。

それから、窓を開けて脱いだ服を雑巾のように絞ると、パンパンと広げて、ルウンから借りた紐で作った即席の物干しにかけた。