コクっと頷き返しはしたものの、ルウンはヤカンに水を入れて火にかける。
よし、次は……と振り返ったところで、キッチンと隣の部屋との境目辺りに立っていたトーマが、呆れているような怒っているような、何とも言えない表情で自分を見ていることに気がついた。
「僕がルンと同じ女の子だったなら、無理にでも着替えさせることができたんだけどね。生憎と僕は男なんだ」
トーマがその言葉に込めた真意は分からないけれど、とにかく早く着替えて欲しいという気持ちはルウンにも伝わった。
「火は僕が見ているから、大丈夫だよ」
ちょっぴり怖いような笑顔に見送られて、ルウンは急いでキッチンを出て着替えに向かう。
意識がそちらに向いた途端、背筋を這い上がるような寒気に体が震えた。
いつもなら濡れてもすぐにシャワーか着替えをするところ、今回はお茶の準備を優先してしまった為、どうやら体が冷えてしまったよう。
急いで寝室に向かったルウンは、手早く着替えを取り出すと、濡れた服を脱いで体を拭き、新しい物を身につけていく。
熱めのシャワーを浴びて体を温めるのが一番いいことは自分でもよく分かっているが、そうしている間にトーマの体が冷え切ってしまうことが心配だった。



