こちらは屋根が付いているので、ルウンに誘われるままトーマも中へ。

二人で入ればちょっと狭いくらいの小屋の中で、突然やって来た見知らぬ男に、鶏達が落ち着かなげに騒ぎ立てる。

そんな中、トーマは卵の回収を買って出て、その間にルウンは掃除を済ませて餌をまいた。


「これで終わり?」


小屋を出ながらコクっと頷いたルウンに、トーマは「じゃあ急いで戻ろう」と促す。

先程から、空が不機嫌そうにゴロゴロ鳴っている。


「ルンは、戻ったらすぐに着替えたほうがいいね。そのままだと、風邪を引くよ」


気遣わしげなトーマの言葉に、ルウンが視線を下ろしてみると、絞れば水が滴りそうな程に、スカートがぐっしょりと濡れていた。


「急ごう。多分そろそろ、強くなる」


トーマの言葉通り、霧雨はいつしかその勢いを強め、もう霧とは呼べない程になってきていた。


「靴底が濡れて滑りやすいから、転ばないように気をつけて」


既に転びそうになって慌てて体制を立て直したところであるルウンは、カゴの持ち手をギュッと握り直して走り出す。

その後ろを、トーマも必死になって走った。

そんな二人をあざ笑うかのように、意地の悪い雨はその勢いを強める。



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