銀色の月は太陽の隣で笑う


勢いは弱くとも雨は雨。それに、空は相変わらずどんよりと重たく曇っていて、いつ天候が変わってもおかしくはない。

ルウンがカゴの持ち手をギュッと握って隣を見ると、意図を察したトーマが頷き返す。


「急ごう。濡れるのには慣れているけど、できるだけ濡れないに越したことはないからね」


ルウンはコクりと頷いて、前方を数秒見据えてから、雨の中に駆け出していく。

トーマもすかさず、そのあとに続いた。

服を着たままシャワーを浴びているような気持ち悪さの中、ルウンまず畑に足を向ける。

水やりは当然必要ないので、することといえば頃合の野菜を収穫するだけ。

雨季に向け、水を大量に含んでも根っこが腐りにくい種類を植えていたのでどれもまだピンピンしているけれど、太陽が滅多に顔を出さない分育ちは悪い。

ルウンの邪魔にならないよう、この時のトーマは畑の外から見ているだけ。

この雨の中、自分のせいでルウンの作業を滞らせてはいけないという分別は、好奇心の塊であるトーマでも持ち合わせていた。

雨でぬかるんだ土や濡れた葉っぱですっかり服を汚して戻って来たルウンにトーマが何か言葉をかけるより先に、少女の足は次なる目的地へと向かう。