止むのを待つのは、一種の賭けだ。
それにこの時期の雨は、止んだとしてもまたすぐに降り出す。
窓をジッと見据えながら、ルウンは屋根を叩く雨音に耳を澄ます。
行くならば今だ、という気がした。
「ん?もしかして行くの?」
振り返ってコクりと頷いたルウンは、再び窓の向こう、降り続ける雨を見据える。
びしょ濡れ必須の雨の中、この家に傘はなく、あるのはレインコートが一人分。
トーマはどうやってもついてくるのだろうし、きっと渡してもレインコートは着てくれないとくれば、ルウンとしても自分だけ着る訳にはいかなかった。
「……走る」
決意を込めて呟くと、ルウンはキッチンから空のカゴを一つ持ってくる。
確認するように見上げれば、トーマは笑顔で頷いた。
「もちろん、一緒に行くよ。旅人は濡れるのに慣れているんだ」
なんでか楽しそうに笑っているトーマを後ろに従えて、ルウンは扉を開ける。
窓が水滴だらけだったため家の中からは判別しづらかったが、屋根を叩く音を聞いた限り、今現在降っている雨はそれほど勢いが強くはない。
ルウンの予想通り、外は柔らかい霧雨だった。
「なるほど。ルンには、ちゃんと分かっていたわけか。流石だね」



