銀色の月は太陽の隣で笑う


それに、決まったルートで回る人が多いので、前もって欲しい物を頼んでおけば、次に来るときに仕入れてきてくれるのだ。


「行商さんは、気のいい人が多いよね」


コクっと頷き返したルウンは、しばらくしてから思い出したようにトーマを振り返る。

ん?と首を傾げるその顔を、ルウンは大層不満げに見つめた。

トーマからあれこれと質問を受けるたびに頭の隅に追いやられて忘れていたが、ふとした拍子に思い出す、どうしようもない不満。


「ルンは、了承してくれたんじゃなかった?」


そう言って笑みを浮かべるトーマには、ルウンの中にくすぶっている不満などお見通しだった。

なにせ、予想通りだから。


「いいんだよこれで。僕は、ルンが普段どんなことをしているのか知りたかったんだから。ルンはちゃんと僕のお願いを叶えてくれている。これってつまり、充分お詫びだよ」


屁理屈だなんてことは自分が一番よく分かっているから、ルウンがどうにも納得いかなそうな顔をしているのも頷ける。

でも、トーマにはこれで充分なのだから仕方がない。


「中の用事は一通り終わったって言ったよね。どうする?雨が止むまで待ってから外に行く?」


トーマの視線が窓の方に動いて、話題も変わってしまったので、ルウンも諦めて視線を移す。