銀色の月は太陽の隣で笑う


相変わらずの雨の中、トーマはルウンと共に朝食作りに勤しんだあと、使い終わった食器を洗って片付け、ルウンの寝室以外の一階部分を掃除して、地下の食料貯蔵用の部屋の確認まで行っていた。

その間に、トーマが気になったことを色々と質問し、ルウンがそれにポツリポツリと答える。


「なるほど。あれだけ涼しいと、夏場でも食べ物が腐りにくくていいね。でも生ものはやっぱり置いておけないから、保存が効くように加工するわけか。買い物はいつもどこまで行くの?」

「ここまで、行商人さん、来てくれる……」

「へえー、行商さんはよくここに家があるって分かるね」

「……近くの村の人、ここにも家あるって、伝えてくれる」


その近くの村とは、トーマがこの洋館に辿り着くにあたって通ってきた村であろうと予測できたが、その村の人達は森の奥に一人きりで暮らす銀色の少女についてどう思っているのかが気になった。

いつか聞きに行こうと、トーマは密かに目論む。


「そうなんだ。僕もね、たまに行商さんにお世話になっているよ。旅の途中で出会った時なんかに」


自分の店は持たずに、あっちこっちと歩き回って商売をする行商人達は、町まで行く足のない村人達や、トーマのような旅人に重宝されている。