「今日は1人なんだ。」



(え?)

彼の声が聞こえた気がした。

前を見て、右を見て、左を見て。

「フッ、何キョロキョロしてんの?」

バッと後ろを向いた。

「幸、、、くん?」

私の声に応えるように、目の前の人はフッと微笑むと、

「久しぶり、園田。」

私の名前を呼んだ。

「幸くん、、、、?」

「だから、そうだって言ってんじゃん。」

「えっと、、、その、、、」

頭の中がゴチャゴチャだった。

(だって、今さっき、どうしてるかな〜的な事
を考えていた張本人が目の前にいるんだし‼︎

驚くのは、当たり前!

うん、当たり前‼︎、、、だよね?)

私が必死に自分に言い聞かせているなか、彼は平然と私に近づいてくる。

そして、私の前に立ち、

「久しぶり、園田。」

(え?それ、さっきも言ってたよね?)

「えーっと、、、久しぶり、幸くん。」

「フッ、やっと言ってくれた。」

「え?」

「いや〜、かなりパニクってるし、面白いか
ら見ておこうかと思ったけど、なんとなくあ
の日の再現がしたくなってさ。」

「あの日、、、?」

「園田が男5、6人組に絡まれてた日であり、
俺と久々に会った日。
そん時、園田、俺に『久しぶり、幸くん』
って言っただろ?
同じ場所だし、なんか同じ言葉聞きたくな
ったんだよ。」

そう言って笑った彼。

だけどすぐに目を細めて、

「けど、今日は園田が男共に絡まれてなくて
良かったよ。」

安心したような顔で、優しく笑って言った。

「、、、///////」

もう私の頭は破裂寸前、顔はとてつもなく赤いだろう。

私はそれらを紛らわすように彼に訪ねた。

「そういえば、なんでいきなりいなくなった
の?」

と、俯いた状態で、彼と目を合わせずに聞いた。

「連絡が取れなくなった理由ってこと?」

私は首を小さく縦に振った。

すると、彼は意地悪そうに、

「目、合わしてくれたら話すよ。」

(なッ‼︎‼︎‼︎)

さらに、顔が赤くなっているだろう。

(でも、目を合わせないと何も話してもらえな
い///)

私は、ゆっくりと顔を上げ、彼と目を合わせた。

彼は少し目を見開いた後、また目を細めて、

「、、、、、そういうの、やめろよな///」

「え、何が?」

「、、、顔、赤すぎ。」

「ッ/////
ゆ、幸くんのせいじゃんか‼︎」

「、、、、、、可愛すぎるって。(小声)」

独り言の様に何かをつぶやくと、私の左手首を軽く掴んで、彼は歩き出した。

何も言えない私は、ただただ彼に連れて行かれた。