何が“ごめんね”なのだろうか?

小夜子はその言葉の意味がよくわからなかった。

「――綾美、ごめんね…。

ごめんなさい、綾美…。

裏切ってごめんなさい…。

ごめんね、綾美…」

彼女は泣きながら、何度も綾美に謝っていた。

綾美と彼女の間に何があったのだろうか?

そして、綾美はどうして彼女に怯えていたのだろうか?

どうして、彼女の顔に向かってカバンを投げつけたのだろうか?

「どうしましたか?」

駅員が何事かと言うようにこちらに向かって駆けてきた。

「あっ、すみません…」

小夜子は足元に落ちている綾美のカバンを拾いあげると、
「あの、彼女をお願いします…。

わたしは知人を探してきますので…」

「えっ、あの…」

訳がわからないと言う顔をしている駅員に彼女のことを任せると、綾美を探すためにその場から走り去った。