ベシッ!

投げつけたペットボトルは壁に当たると、じゅうたんのうえに転がった。

それを見て由紀恵は息を吐くと、カバンからクリアファイルを取り出した。

クリアファイルには履歴書のような1枚のプリントが入っていた。

「金子安里、か…」

プリントの名前に書いてある名前を見ると、由紀恵は呟いた。

来週に控えている友人の誕生日パーティーに同行する友人を1人派遣して欲しいと言う依頼で、彼女は会社を訪ねてきた。

――実は友達ができたのはつい最近、それも上京して大学に入ってからなんです

理由を聞いた由紀恵に、安里はそう答えた。

話によると、安里は中学高校時代に友達ができたことがなかったのだそうだ。

いわゆる、大学デビューと言うヤツである。

――でも1人も連れてこないと言うのはあれなので…

呟くようにそう言った安里は、そこで口を閉ざした。