「きゃあああ」
「皇子(オウジ)!」
部屋のそばにいたらしいうたさんの焦った声が廊下から聞こえてきた。
「なんだ、うた。俺たちの邪魔をするとは何事だ」
明らかに男の声色は怒りに満ちている。
暗闇の中、ぼんやりと見える表情は確かに怒っているように見えた。
「姫さま!姫さま!」
「私のことも見まがうなんてひどいお方」
うたさんがオロオロしながら必死で呼ぶと、ロウソクを持って姫がやってきた。
ロウソクに照らされて、姫の顔がしっかりと見える。
彼女は話した言葉とは逆に嬉しそうに笑ってる。
「なっ、なっ!!」
ロウソクの灯りで、皇子と呼ばれたその人の表情がしっかりと見える。
心底驚いた表情で私と姫を見比べていた。
「どういうことだ!俺は幻でも見ているのか!?」
「クスクスクス」
男は本当に目をくりくりと動かして戸惑っている。
それに対して姫は心底楽しそうに笑いながら
近くにあった燭台にロウソクを置き、私の隣に座った。
この人を驚かせるために、私をここで寝させたんだ!
なにか企んでいるような感じは察していたけど、
まさかこんなことを考えていたなんて。

