「……はい」

「すまんな、何も知らず。
 いつかはお前を怒った」

声には悔しさや悲しさがにじんでいた。

「いいんです、皇子は悪くありません」

「……伯父上も、どうやら一枚噛んでいる」

え?

今度は、皇子のカオに怒りのようなものが見える。

「俺が智を解放して美姫を智の処へ連れて行こうとしている事は
 恐らくはもう二人の耳にも入っているだろう。
 ……急ぐぞ」

「はい」

皇子は周りを常にうかがいながら歩き、
私は皇子の足手まといにならないように必死についていく。