「姫は俺の言う事は何でもきくのだ」
皇子は目を伏せた。
姫の心情を思うとつらすぎる。
そして、皇子の彼女への想いがイヤというほど実感させられる。
そんなふたりが犠牲になってもいいの?
私がなにを感じているのか、皇子には多分お見通し。
今見せていた弱い部分などまるでなかったかのように、
いつもの皇子みたいにふてぶてしいほどにニヤリと笑う。
「言っておろう、俺と姫は所詮はこの世界でしか生きられないと」
そして、力強く言い切った。
この人が何故後世に遺るほど名を馳せたのか少しだけわかった気がする。
姫があんなにも無邪気に慕っているのかわかった気がする。
私はいつのまにかこぼれていた涙を左手の甲で拭った。

