色々考えてしまってほとんど眠れないまま、朝がやってきた。


覚悟を決めているようで、私の心の中は迷いや戸惑いで溢れていた。

この期に及んで、
私がお嫁に行く前に智が見つからないかなとか
目が醒めたら全部夢だったらいいのになとか
往生際の悪いことを考えていた。


でもやっぱり現実はかわらなくて。

私が姫の家でお世話になっていて、智は見つからないままで。

そして、孝徳天皇のところにお嫁に行くんだ。


ふぅ……。


「美姫さま、そろそろ」

秋保さんが出発を促してきた。

秋保さんも宮中へは一緒にくることになっていて、今の私にはそれだけが唯一の救い。

「はい」

小さく返事をして、玄関へ向かった。