その夜、皇子が現れ、姫の部屋へ呼ばれた。


「美姫、お前は明日帝のもとへ行くことになった」

明日……。

とうとう決まったんだ。

姫も知らなかったようで、驚いたカオで私と皇子の顔を見比べてる。


「わかりました……」

「向こうにはお前に必要な物などは全て整えてある。着の身着のまま行くが良い」

「はい。……今までありがとうございました」

深々と頭を下げてから部屋を後にした。


いよいよ明日。

結局、智の行方はわからないまま。
智が生きているのか、それすらもわからないまま。

でも、智は生きてて、私がお嫁にいけば絶対に解放してもらえる。

それを信じて今日までなんとかふんばってきたんだ。


もうあっちの世界にも戻れないような気がしてきた。

相変わらず、毎日目が醒めるのはこの部屋だし、
今日はとうとう帝のお嫁さんに行く日も決まってしまったもん。


ねぇ智。

もしかしたら私たち一生もう逢えないかもしれないね。
もし逢えたとしても私はその時にはもう別の人の奥さん。

でも、絶対に信じていて。
私の心は智だけのものだって。


ねぇ神さま。

もうあちらの世界に還ることは私もあきらめました。

だから、どうか智の無事と、
そして、私の心は一生智のもとに置かせてください。

どうかお願いします。