ふたりも心を痛めてる。
自分たちのせいだって思ってる。
そして、私が今回言い出したこともなにかあると察してる。
でも、絶対に言えないし、私から言わない。
智の命がかかってる。
智、私がんばってるよ。
だから、どうか無事でいて。
さ、もう寝よう。
今日はすごく疲れた。
もう、なにも考えないようにしよう。
そう思って秋保さんが敷いてくれていたふとんに入った。
だけど、目をつむっても浮かんでくる智の姿。
今、智はどこでなにをしてるのかな。
ご飯、ちゃんと食べさせてもらえてるのかな。
やっぱり、牢屋みたいなところに入れられてるのかな。
最初にあった日みたいに、縄でつながれて動けないようにされてるのかな。
ごめんね、智。
私だけ今までとおんなじような生活をしてる。
こうやってふとんに入って寝ることができる。
智と私はなんのためにこの世界に堕ちたのかな。
もしかしたら、やっぱりこれは全部夢なのかな。
だったらいいな。
目が醒めたらあのウチの自分の部屋のベッドで、
部屋から出たらあの頃のようにそっけのない智がリビングにいて。
お互いに他人行儀なあいさつを交わして。
智が無事でいてくれるなら、
もうあの頃のように苦しい想いを抱えたままでもいいや。
ねぇ智。
智はどう思う?
もし、今起こってることが現実だとして、私がこんな風に思ってるって知ったら。
智のことだから怒ってくれるかな、くれるよね。うん。
ごめんね。
私は、智と一緒に幸せになれないことよりも智が苦しい想いをすることのほうがイヤだから。
約束守れなくてごめんね。

