「美姫さま、大丈夫ですかっ」
ヨロヨロとやっとの思いで部屋の外に出ると、
秋保さんが支えてくれる。
「ありがとう……」
どうしたって私があの条件をのむしかないワケで。
智の命を引き換えに、智とはなればなれにならなきゃいけないんだ……。
智とはなればなれになるのはイヤ。
あんなオジサンと夫婦になるなんてやだ。
でも、智が死んじゃうなんて絶対にやだ。
考えたこともないし、考えたくもない。
頭がクラクラする。
地面がグラングランにゆがんでる。
「美姫さま、姫に全てお話した方がよろしいのではないですか?」
外に出て、周りをキョロキョロしながら依然独りだと歩くこともままならない私を支えてくれてる秋保さん。
心配そうに小声で言ってきた。
やっとの思いで私は首を振る。
もう力が入らない。
「私が話したことがわかったら、智が……」
「しかし、美姫さまお独りで抱えられる事ではございません」
「でも、智にもしものことがあったら」
必ずしも彼女の言いつけを守ったからといって、智の命が保証されるとも思えない。
だけど、私がヘタなことをすれば、智の命がない。
それだけははっきりとわかる。
私にとって智がいなくなることがなによりも一番耐えられないこと。
「美姫さま……」
声が震えていて、見ると秋保さんは泣いてる。
それを見ると、急に涙があふれてきた。
「秋保さん……」
ふたりで木の陰で抱き合って声を出さずに泣いた。
ありがとう、秋保さん。
やっぱりしほりと似てる。
突きつけられた刃 終