「こちらでお待ち下さい」
中に案内され、私は畳と板張りが混在してる部屋に通された。
秋保さんは部屋の外、男は私の後ろに控えてる。
ツバを飲み込む音をたてるのもはばかれるほど、
緊張で激しい心音が響きそうなほど、
空気がピンと張りつめてる。
やっぱり!
部屋に入ってほどなくして現れたのは
姫と皇子の母親・皇極天皇だった。
彼女が入ってくるとうっすらとお香の薫り。
「美姫、元気にしていましたか?」
微笑んでくれるけど、その笑顔はアンドロイドみたいで不気味。
「はい……」
「今日来ていただいたのは他ならぬあなたに頼みがあるからなのです」
どんな感情を伴ってるのか表情や口調からはまったくわからない。
だけど、今までのことを考えれば
それは私にとって受け入れにくいことなんじゃないかって思う。
ゴクリ、小さくツバを飲み込んだ。
「……私に頼み、ですか?」
「ええ」
まただ。
ニッコリと笑ったものの、それはまるで人工的。
「なんでしょうか?」
じっと私の目を見つめてくる。
こわい。
まるでメデューサみたい。
私は石のように固まってしまった。

