あんなことをきかされて当然眠れるはずもなく、
夜がしっかり明けないうちにあの男は迎えにきた。
秋保さんとともに家をこっそりと出る、
悪いことしてるワケじゃないのにって思うけど。
「姫や皇子には言ってないでしょうね?」
「美姫さまが此度家を空ける事について、
姫の付きの者に上手く話していただくよう伝えております。
従いまして、姫や皇子の耳に入る事はこちらからは絶対にございません」
秋保さん、そんなことまでしてくれてたんだ!
彼女を見ると小さくうなずいた。
「了承いたしました」
男は私たちを見て真顔で答えた。
おそらくは五分もかからない場所で男が立ち止まった。
目の前には姫の住んでいる邸宅と同じような家。
「こちらでございます」
「ここは……」
秋保さんはどうやら家の主を知ってるみたいで複雑そうにそれを見てる。
ここってやっぱり皇極天皇がいるの?
きこうとすると男が私に鋭い視線を送ってくるから、
私は開きかけた口を真一文字に結ぶ。
いい、どうせ中に入ればすぐにわかること。
誰がなんのために私をここに呼んだのか、全部わかる。

